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大地、海、空、人々の想いを、おいしく料理して、ひとつのおさらに。(1) 2021.10.15

おばんざい食堂 ひとつのおさらは、京都市の真ん中、京都御苑と二条城の中間地点に位置しています。店舗は、改装を施した昭和初期の京町家で、土間の奥には掘りごたつのお座敷、坪庭、ごはんを炊くためのおくどさん(かまど)があります。お出しする料理は、「おうちごはん」ばかり。地産地消、一物全体を意識したオーガニックな食材を集め、天然の調味料を使うことで、化学調味料を全く使わず、すべて手づくりしています。ご利用いただいているのは、地元の方、観光の方、外国の方、家族連れ、お仕事中の方、ママ友のランチと多種多様な方々です。

私がなぜ飲食店をしようと思ったのですかと聞かれると、「食に無関心な人にアクセスしてもらうため」と答えます。食のセミナーやイベントを開催しても、食に関心の高い人しか集まらない現状があり、本当に気づいて欲しい人に対してどうすると届くのかと考えていました。ふと、敷居の低い飲食店が近道になるのではと思ったのです。
「おばんざい食堂 ひとつのおさら」は食事のできる環境教育施設です。より理解してもらうには分解して説明してみると、このお店のコンセプトが伝わるのではないかと思います。

「おばんざい」とは、京都の家庭で昔から食べられてきた粗末なおかずのこと。京都では修行を重ねた料理人が作る料理を京料理と呼び、家庭で作ることができてさほど手の混んでいない料理をおばんざいとします。お店で出している料理は、京都の家庭の日常の食卓に上がるおかずです。私たちは、食文化を守り、伝える役割も担っています。

「食堂」としたのは、一堂に会して食べる場所であって欲しいとの願いがありました。ダイニングルームではなく日本語の食堂。地域や家庭の中にある食事をする場所です。そこには、おうちの人が、家族を思ってつくる美味しいごはんが思い浮かぶのではないかなと考えました。私たちは、食卓を囲むことが多くの問題解決への一歩になると信じています。

「ひとつのおさら」は、なぜ?とよく質問されます。文字通りワンプレートでお料理が出てくるのではありません。逆におかずの味が混ざってしまわないように、別々の小鉢に盛り付けていますし、伝統的な一汁三菜(プラスα)なお食事です。「ひとつのおさら」とは、いのちの営みのすべてが、このお食事の中に盛り付けられていることに意識的になり、感謝していただくことができるようにとの思いを込めました。

木に実る果実も、海や畑での収穫も、太陽も雨も、そして何よりも、人々の労働もそこにはあります。季節とつくり手がみえるようなお料理を通して、いのちに思いを馳せ、自分も地球の一部であることを感じことができるようにとのメッセージなのです。

私たちは、食べたものでできています。そして、何を食べるかは自分を表しているのです。

西村 和代(にしむら かずよ)

京都生まれの京都育ち。<いのちと食と農>を研究テーマに大学院でソーシャル・イノベーションを学んだことをきっかけに、「おうちごはん」が食べられる食堂を始める。会社経営をする主婦でシェフ、たまに大学講師。女性支援や、子どもたちに学校菜園(エディブル・スクールヤード)を届ける活動も行っている。

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