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尾瀬の自然便り(1)山装う秋の尾瀬 2021.10.15

尾瀬の山小屋でこの文章を書いている今、外から雄鹿の恋鳴き(ラッティングコール)が聞こえています。恋鳴きとは、繁殖期の雄が縄張りを誇示し、雌への求愛のために発する鳴き声です。秋が深まる頃、よく聞こえます。

山の秋、とくに秋冬への季節の歩みは早いです。私がお客様をご案内させて頂いている尾瀬は今、晩秋を迎えようとしています。

秋の尾瀬の醍醐味は何と言っても草紅葉!9月中旬から下旬頃に最盛期になります。

草紅葉というのは、湿原の草や低木などが色づくことを呼ぶのですが、光の差し込み具合で湿原が金色に光り輝くようにも見えます。そのようなときには、お客様から度々、「ナウシカのシーンみたい!」と声があがることも。(※映画「風の谷のナウシカの終盤のシーン」)

10月に入ると、草紅葉は枯紅葉になり、今は森林の紅葉が最盛期を迎えています。
そして、落葉へと―――樹上の彩りから、足下の彩りに移り変わっていきます。

さて、みなさんは下記のような言葉を聞いたことがあるでしょうか?

春は「山笑う」
夏は「山茂る」「山滴る」
秋は「山粧う(よそおう)」
冬は「山眠る」

これは俳句などに使われる季語で、四季それぞれを表現している言葉です。
(※上記の言い方はこれだけではなく、他にもあります)

春の芽吹きは賑やかで、思わず笑みがこぼれてしまうように、
夏は新緑が深緑に変化し、雨の滴る様子もまた美しく、
冬の木々の葉が落ち、しんっと静まる様子がまるで眠っているように、
そして、秋は何色の絵の具があっても足りないくらい彩りにあふれている。
色々なとらえ方がありますが、季節の様子をこんな短い言葉で表しています。

ハート型のツタウルシの落葉

山眠る冬に向けて最後の華やかさを見せてくれている尾瀬。
それを一目見ようと、週末は登山者で賑わう日々が続いています。それも残りわずかな日々ですが、久しぶりに人が戻ってきた尾瀬に嬉しさを感じます。

数日前に雪虫も飛んでいたので、まもなく尾瀬にも初雪の知らせが届くでしょう。
そして、11月頭になると尾瀬は閉山となり、現地には行けなくなりますが、
こちらの連載で尾瀬をご紹介できたらと思います。

伊澤 菜美子(いざわ なみこ)

尾瀬自然ガイド。神保町で紙の卸売会社に勤めながら、休日は森に通う社会人生活をしばらく過ごす。その後、山梨の自然学校で環境教育を学び、ガイド、ビジターセンター運営の経験を経て、群馬県北部に移住。現在は尾瀬国立公園で自然や関わる人々の魅力、環境保全の取組みなどを伝える仕事に携わる。

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