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お茶の深い味わい(最終回) 2021.09.15

 約1200年前に最澄や空海ら遣唐使が持ち帰り、鎌倉時代の栄西により広まったお茶。「喫茶養生記」で健康効果も知られました。当時の高僧達は薬代わりにハーブとして茶を珍重し、一部の身分の高い者しか飲めませんでしたが、ここから抹茶や蒸し製煎茶という日本独自の製法が発達し、江戸中~末期に庶民にも親しまれる国民的飲料になりました。豊臣秀吉と千利休、徳川家康も茶に魅了された歴史的人物。昔の茶会は、国を動かす人々のパーティーであり社交や政略の場でもあった訳です。幕末には武士の生計を支えるために、勝海舟が、家康の駿府に一台茶園を開いて生産量が増え、庶民的になったとも言われます。こうした茶の歴史も味わいのうちではないでしょうか。

 団欒や友人とのティータイムは、語らいという味わいもあり、お茶は単なる飲料ではなくコミュニケーションツールであり、茶道にはおもてなしの極意が溢れています。

 味覚的な味わいは、アミノ酸の甘みとテアニンの旨み・コクとカテキンの渋み、タンニンの苦味の程よいバランスが深みを生みます。上級茶ほど甘みと旨味が強く、爽やかな渋みが後味を引き締めてくれます。中級煎茶はややさっぱりとした甘みと渋みが楽しめます。食後には、熱めの中級煎茶で、お茶菓子には湯冷ましをしてゆっくり旨味を引き出した上煎茶、お休み前はカフェインや刺激の少ないほうじ茶、と使い分けるのも楽しいですね。

 味覚と合わせて大事な香りですが、上質な茶葉ほど清涼感があり、新芽の香りです。新茶は特に火入れを控え目にし青葉臭を残すので、鮮やかな緑色と相まって新鮮さが感じられます。安いお茶は渋みや苦味を和らげる為に火入れ乾燥を強めにする事が多く、さっぱりとした香ばしさが楽しめます。そして、抹茶は煎茶に比べ香り高く、旨味・渋みが楽しめます。

 味覚も香りも湯の温度で感じ方が変わります。紅茶や烏龍茶など発酵茶は、味覚的に甘み・旨味はほとんどなく渋みが中心ですので、香り・渋みを楽しむ茶は高温で淹れるとおいしく、繊細な甘みやコクを楽しみたい玉露や上煎茶は70℃程に冷ました湯でゆっくり淹れるとおいしいです。

飲むだけでなく料理やお菓子づくりにも幅広くお茶をお楽しみください。

金久保俊也(かなくぼ としや)

農林水産省茶業試験場を経て嘉永年間創業の株式会社下総屋茶舗(しもうさやちゃほ)五代目就任。煎茶道静風流、茶道裏千家流、肥満予防健康管理士、ダイエットアドバイザーの資格を持つ。「食と健康」を重視し【5歳若返りダイエットコーチング】を提供する現役トライアスリート。

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