こんにちは。日本の昔ながらの麻の繊維から糸づくりをしているitonamiです。
この前は麻に種類があるお話をさせてもらったのですが、
今回は麻の糸づくりについてすこし触れたいと思います。
繊維と繊維をつなぐことを績む(うむ)といいます。
手でよりをかけて績みつなげます。そしてつなげ終わると、糸車で全体に撚り(より)をかけ、糸ができます。
ひと昔前の里山では糸績みも機織りも当たり前に見れる風景の一つでした。
糸績みに大した技術は必要ではないです。
長い時間をかけて手を動かしていれば糸はできていくのです。
そのかかる時間の中でいつも思い出し、想いを馳せる出来事があります。
以前に働いていた職場の代表との、入社面接の際のことです。
「あなた、自分がつけている時計がなぜ千円で買えるのか考えたことがあるか」と言われました。
20代前半、そんなことを一切意識しない、大量生産社会の申し子でした。
服屋に行っても「いかに安くて自分の感性に近いものを買うか」を基準に物を購入していました。大量生産の流れが著しく、早く物事を効率よく遂行するということが良いとされる風潮が多い時代の真っただ中です。
一方「績みつなげる」という行為は、とても時間と手間がかかるものです。言われた当時はピンとこなかったですが、績みつなげる時間を重ねるたびに、その言葉はより自分の中に腑に落ちてきました。
なぜ大量消費の物が安く手に入るのかということ。機械を使ってたくさんのものを一度に作るから安く購入することが可能だということもありますが、一方で海外での不当労働で困っている人の上に成り立っているということ。
簡易機織りを持って、ワークショップで全国を周っている中、参加者の方々の反応を見ると、
「こうやって布ができるんだ!」という方がとても多いです。
繊維から糸ができて、糸から布ができている。
その理屈を知っている人は多いですが、ファストファッションが当たり前の今、
毎日身にまとっているものが、どのようにできているのか知っている人は多くはないかもしれません。
電気や動力を使わず里山に当たり前にあったもので、繊維と繊維をつなげる「糸績み」。
日々まとうものに想いを馳せるきっかけになればと思い、日ごと糸を績みつないでいます。