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市民のための環境公開講座パート1 第3回「地球温暖化リスクと人類の選択 ~IPCCの最新報告から~」レポート 2014.08.20

こんにちは!「山の日」に誕生日を迎えましたです。
実は先日、完成間近のレポートが行方不明になり、振り出しに戻るというこの夏最大の悲劇に見舞われました・・・が、何とか気持ちを立て直しリライトしましたので、最後まで読んでいただけたら、とても嬉しいです!!!

 

パート1「どうなる?気候変動のこれから」の最終回が7月15日(火)に開かれました。

今回は、国立環境研究所 気候変動リスク評価研究室長江守正多先生をお招きし、「地球温暖化リスクと人類の選択 ~IPCCの最新報告から~」のテーマでお話を伺いました。

先生は講演の中で、地球温暖化に関して、地球の気温や水量の変化を、シミュレーションを用いて分かりやすく説明してくださいました。

また、先生の著書「異常気象と人類の選択」を昨年出版されています。興味のある方は、是非読んでみてくださいね!

 

《講演内容のおさらい》
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは・・・?

各国政府が主体で、気候変動(地球温暖化)について、何がどれくらいわかっているのかを評価します。依頼された専門家が報告書を作成しますが、政策判断は行いません。

昨年から今年にかけて、第5次評価報告書(AR5)が順次発表されています。先生が執筆に関わっているWG(ワーキンググループ)1:科学的根拠をはじめ、WG2:影響、適応、脆弱性、WG3:緩和策の3つの作業グループから成っています。

地球温暖化の仕組みと現状

地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスが大気中に増加することで、赤外線が宇宙から逃げにくくなり、地表付近の気温が上昇する現象です。現在、大気中の二酸化炭素濃度は400ppmに達しており、これは産業革命前の値、280ppmより4割増以上上昇しています。

この原因は人間活動による石灰、石油、天然ガスなど化石燃料の燃焼に伴う二酸化炭素の排出である可能性が極めて高い(95%以上)そうです。一方、世界の平均気温は、産業革命前に比べ0.8℃程度上昇しており、この気温上昇は1980~2000年に特に顕著でした。

最近10~15年、気温はあまり上昇していませんが、その理由の大部分は、熱が海の深層に運ばれているためと考えられます。逆に、今後海の深層の熱が地表付近に出てくると、再び顕著な気温上昇が生じることになります。

地球温暖化のこれから

地球温暖化をどこまで受け入れられるのか、耐えられるのかということについては、いくつもの見方があります。その中で、「誰が考えても避けるべき」悪影響を考えることが重要になってきます。
例えばグリーンランド氷床融解の不安定化。不確実性が大きいものの、「2℃」程度で始まる可能性があるそうです。このように、ある温度を超えると引き起こされる地球システムの質的な変化のことを‘Tipping Elements’と言います。

国連の温暖化交渉では、気候変動対策の長期目標「産業化以前からの世界平均気温の上昇を2℃以内に収めるべき」との見解が認識されています。今からこの目標を達成するには、二酸化炭素の排出量を2050年までに半減程度、2100年までにゼロに近いかマイナスにしなければなりません。「切り札」として挙げられたのが、バイオマスCCS。正味の人為排出量をゼロに近くするため、二酸化炭素を大気から吸収する技術です。

しかしこれには、食料生産との競合、生態系破壊、CCS自体の社会的受容性といった問題も付きまといます。また、最終手段として挙げられた「気候工学」によって太陽放射を管理し、二酸化炭素を除去する方法。これにもいくつかのリスクは含まれています。

一方で、こうしたリスクを取らずに温暖化の進行を許せば、将来の温暖化の悪影響に対処しきれなくなるリスクがあります。人類はここまで追い詰められてしまったのだという事実を、直視すべきだと先生はおっしゃっていました。

気候変動関連リスクを「全体像」で捉える

気候変動のどの影響を被るのかというのは、国、地域、世代、社会的属性によって異なります。
地球温暖化という大問題に対し求められているのは、専門家の持っている質の高い情報を共有し、社会の多様な人々の意見を聞きながら、透明性の高いプロセスに基づき、政治的責任において判断されるべきではないかということです。そのような仕組みや関係者間の相互の信頼関係を構築するためには、市民と専門家間の対話による相互不信解消の努力が必要となっているのです。

 

*詳細のレポートはこちらからご覧になれます。

 

《講座の感想》
猛暑や豪雨をはじめとする異常気象と地球温暖化

個人的に、講座の中で見た世界の気温変化のシミュレーションは衝撃的でした。数値として知ってはいたものの、ビジュアル的に見たことで、対策を行わなければ、今自分が住んでいる場所で、今までのような生活を行うことさえ困難になってしまうという危機感を持ちました。

また、異常気象と地球温暖化との関連性についても、科学的な根拠を基にした見解を示して下さいました。私自身、最近のうだるような暑さや頻繁なゲリラ豪雨といった「異常」と思われる気象が増えてきたのは、温暖化の影響だろうかと考えることがありました。

異常気象は、気象庁の定義によると、「30年に一度起こる程度の珍しい気象」のことを言います。つまり、温暖化に関係なく、「30年に一度の猛暑」や「30年に一度の豪雨」はやってくる、と言うことです。こうなると、これまでは30年に一度だった自然のゆらぎによる猛暑や豪雨が、温暖化によってより頻繁にやってきているかどうかを見極めることが重要になってくると言います。
この点に関して、IPCC 第5次報告書の見解では、「高温」は、温暖化によって非常に高い可能性(99%以上)で増加した異常気象である一方、大雨の頻度に関しては、確信度が中程度であるとしています。

こうした身近な現象の背景に、地球温暖化がどの程度か関わっているのかを含め、地球温暖化に関する正しい知識を身に着けていきたいと強く感じました。

誰がリスクを判断するのか

地球温暖化の対策に関しては、どのような手段をとったとしても、それに伴う何らかのリスクを被ることになります。とるべき行動の先にあるリスクを直視したうえで、選択を行っていく必要があります。
このリスク選択という点について、先生は、専門家や政府だけで判断して決めてよい問題ではなく、社会全体で議論して決めるべきだということを強調していらっしゃいました。

地球温暖化という1つの問題に対しても、様々な見解があり、悪影響にフォーカスした対策積極派もいれば、好影響にフォーカスした対策消極派もいて、知識を持った専門家が合理的に判断すべきとするテクノクラシー支持者もいれば、主権を持った市民が民主的に判断すべきとするデモクラシー支持者もいます。

2011年の福島第一原子力発電所の事故について言えば、政府・専門家により示されていた「原子力ムラ」の「安全神話」や、低線量被曝について、市民はクリティカルな視点から意見を言い、政府や専門家に要望をし、自ら正しいと思う行動を起こし始めました。
このように、市民は政府や専門家に任せるのではなく、自らの問題として捉えるという姿勢、政府や専門家は幅広く意見を受け入れるという姿勢が、今、地球温暖化という問題に対しても求められているのだと思いました。

一市民である自分ができること、というのは、政府や専門家から与えられる情報を鵜呑みにせず、常にアンテナを張って正しい知識と情報を得ること、その上で積極的に意見発信をすることであるということを再認識した講座でした。

(文責:森)

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