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【レポート】森で学ぶサスティナビリティin鳴子を開催しました 2025.07.15

6月27日(金)~28日(土)、宮城県鳴子温泉にて、「森の入口から出口まで」を体験し、自然とともに生きる暮らしを体験する1泊2日のサスティナブルなツアーを実施しました。

舞台となった宮城県鳴子温泉の「エコラの森」では、乱伐などによって荒らされた森を健全に戻し、木を育て、木材やエネルギーに活用する取り組みが行われています。協働のNPO法人しんりんは、そのエコラの森で「100年、200年続く未来の森づくり」を目指して森林資源の有効活用を推進しています。

森の体験を通して人間生活と自然のバランスを考えながら、自分の生活を見直すきっかけになるとともに、ストレス社会で頑張る大人が自然に癒しを得る機会としました。今回は、東京、神奈川、宮城、北海道から10名に参加いただきました。

このやる気に満ち満ちた参加者たちの表情!

自然にふれて、ほっと肩の力を抜く2日間

27日お昼、「サスティナヴィレッジ」に集合してスタート。宮城県産の木材を使用して建てられた賃貸アパートと戸建て、交流の場としての研修棟を備えた、サスティナブルな暮らしの場です。建物には無垢の木材や自然塗料を使用し、冷暖房や給湯などのエネルギーにも木質バイオマスを活用するなど、持続可能な暮らしを実現するモデルとなっています。

まずはNPO法人しんりんの大場隆博さんから、森林の循環する仕組みや、森の人への癒しの効果について解説をいただきました。森に入ると、草葉の香りや水のにおいなど複雑だけど清々しい香りがして、安らぐ気持ちになりませんか?その香りは「フィトンチッド」と呼ばれ、リフレッシュの効果があるのです。この森の癒しの効果を全身で感じていただく、それがこの2日間のメインです。

サスティナヴィレッジはエコラの森の上にあって、いい空気!

全員つなぎに着替えて、さあ森へ!

1日目は「林業」です。森の現状を知るために、用意された場所ではなく、普段きこりさん方が活動する整備されていない荒れた森に入ります。まず入口のありさまに、皆さんびっくり。

なぜ斜面が崩れたのか?健全な森はどんな森か?では、その森にある木はどんな木か?
斜面が崩れているのは、根をしっかり張れる木が育たず、雨がそのまま流れてしまったことが要因と考えられました。では木が育たなかったのは、なぜでしょう。森が健康であるためには、適度に間伐し、光を森の中に入れることが必要です。

そこで参加者には、どの木を間伐したらよいかを選んでもらいました。ここで木こりさんが、たくさん装備を持って登場!参加者が選んだ間伐する木を、チェーンソーで切り倒していきます。

ところが3本目を切り倒そうとしたときに、トラブル発生!なんと木の高いところにツルが3本もかかり、隣の木に巻き付いてしまっていたのです。木にロープをかけ、参加者全員がしっかりその先を掴んで、
「せーーーの!!」掛け声に合わせて何度も何度も、何度も引きます。枝が引っ張られる音、ツルのちぎれる音、そして響くメキメキという音。最終的に3本目のツルが切れず、木の幹が折れて大地に落ちてきました。

「林業は命がけなんだな…」「たまに間伐されていないと、1本切るのがこんな大変なことになるんだ」
参加者からはそんな声が聞こえてきました。

間伐した後、枝葉のすきまからやっと見えた青い空を見上げます。

休憩時間、スギの球果で煮だしたお茶をいただきました。

1日目は森の現状を知る時間でした。まずは「森の入口」、健全な木が育つためには人の手が不可欠なこと、一方でその手が足りていないこと、それによって土砂災害など人間の生活にも大きな影響が発生することを学びました。私たちがいわゆる「森林浴」で行くような整えられた森だけではなく、このような荒れた場所が、日本中にあるのです。

さて、思いがけずかなり本格的な林業体験になりましたが、気を取り直してホテルオニコウベへ。宿泊は山荘を1棟貸し切っていますが、お風呂はホテルで入ります。湯舟やサウナなど、しんりんの木材がつかわれた大きなお風呂に、体がどんどんゆるんでいくのを実感します。
山荘にもペレットボイラーが使われていました。

ボイラーに使われている木質ペレット。お風呂はこれで沸かしているそうです。

夜は、しんりんと一緒に活動している「鳴子温泉もりたびの会」の方や、鳴子こども園の園長さんなど、地域の方も加わっての懇親会。伝統工芸や子どもの自然体験など、話に花が咲きました。

地域で活用される木材たち

2日目はエコラの森歩きからスタート。エコラの森は、約30年前にリゾート開発に失敗したのち、お金になる木だけが乱伐され、放置された約260haの荒廃した森林でした。しんりんが企業等と協力しながら植林や草刈りなどの手入れを行い、時間をかけて昔の豊かな森に蘇らせようとしています。その森づくりの経緯と思いを大場さんから聞きながら、森の様子を観察しました。

手入れされ、植林した苗が元気に育っています。
ふりかえるとぼうぼうの草。私たちの身長くらい伸びています。草刈りしないとこんなに伸びてしまうんですね…。

同じエコラの森ですが、前日の荒れた森とはちがい、植林や草刈りなどの手入れがされ、足元には小さな草花が咲き、チョウなどが優雅に飛び交っています。

7割間伐を目指した場所を場所で一息。見上げると枝も重ならず、木と木が適度な距離を保てていることがわかります。

 

続いて訪れたのは「準喫茶カガモク」さん。鳴子温泉の伝統工芸「こけし」のアレンジ雑貨がたくさんある喫茶店です。ここでコーヒーとドーナツをいただきながら、こけしの絵付け体験をおこないました。

鳴子地区の「木」を使った、世界にひとつだけのMYこけしを、皆さん大事そうにお持ち帰りしました。

最後に訪れたのは「鳴子こども園」です。園舎の木材は鳴子産。地元の山主の方が寄付してくださったそうです。木の柔らかさと、保育士さん方の園児たちへの大きな愛を感じるつくりの建物は、訪れた私たちの心も包んでくれるようでした。

童心にかえってくつろぎ、木の癒し効果を全身で受け取る参加者たち…
お弁当は「鳴子の米プロジェクト」むすびやのおにぎり!

子どもたちがお昼寝の時間にお邪魔したので、ひっそり声を潜めながら園舎を見学。角の少ない丸みを帯びたつくり、素朴な木の感触、ペレットストーブの存在感。地域の人からお裾分けしてもらった漆の器やちゃぶ台、昔ながらのおもちゃから、子どもたちが大事に使い込んでいる様子が伝わってきました。

参加者の声

最後のふりかえりでは、参加者ひとりひとりの感想をシェアしました。

  • 「お腹も心も満たされた2日間だった」
  • 「5~10年後、またあの森に行きたい」
  • 「木の話は全部、10年単位で考えられていることが驚き。自分はまだまだ小さいなと思った」
  • 「反応がすぐあることが当たり前と思っていたけど、もっとじっくりトライ&エラーしながら、長い目で見る消費社会になればいいと思った。もっと長期で考えましょうよと言いたい」
  • 「日頃、持続可能性や未来について考えて生活することがなかった。でも木の伐採から使い方まで、未来を見据えた取り組みを今回見て、自分も関わっていきたいと思った」
  • 「私たちは社会の枠組みの中で生きているけど、そこから想いが溢れた人たちの頑張りでこうやっていいものが出来たんだなと思ったら、もっと自分を出して、染まらずに生きていきたいと、この先の人生を考えるきっかけになった」

参加者は日々の頑張りから少し離れて、森を育てることから木材、工芸品、エネルギーなどに残らず活用される循環を学ぶとともに、森の空気や木のあたたかみが私たちに与えてくれる穏やかな気持ちを受け取ることができたのではと思います。

JEEFは、東京マラソン財団チャリティ RUN with HEARTの寄付先団体です。本事業は、寄付先事業として実施いたしました。JEEFでは「誰ひとり取り残さない環境教育・自然体験」を目指し、日常生活を営む上で困難や課題、心配を抱える子ども・大人に、自然体験や癒しの機会を提供しています。

東京マラソン財団チャリティ RUN with HEART公式ウェブサイト

「頑張りすぎず、生きること」。今回の鳴子の森、温泉、地域の人々からもらったヒントを一人ひとりが持ち帰り、今後の暮らしに活かしていっていただければ幸いです。

 

 

文責:垂水恵美子(総務部 寄付・会員担当)

 

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