「虫を捕る」から「虫に会いに行く」へ
―マラサリ村で出会った、生物多様性と地域の暮らし―
こんにちは。海外事業グループの小池です。
8月1日から11日まで、JEEFインドネシアの活動地を訪問してきました。
今回の出張では、「昆虫」「ごみ」「マングローブ・教育」という3つのテーマから、インドネシアの自然と地域の暮らし、そしてJEEFのこれからの活動の可能性を探りました。
全3回で、その様子をご紹介します。
第1回のテーマは、昆虫です🐛
昆虫ハンターと、インドネシアの森へ
今回ご一緒したのは、メディアでも広くご活躍されている、昆虫ハンター/博士(農学)であり東京大学研究員の牧田習さん。
向かったのは、西ジャワ州にあるグヌン・ハリムン・サラック国立公園内に位置するマラサリ村です。
夕方、村に到着すると、さっそく「ライトトラップ」を設置しました。
白い布に光を当て、光に集まってくる昆虫を観察する方法です。
時間が経つにつれ、白い布には次から次へと昆虫が集まってきます。
希少価値の高いジャワコーカサスオオカブトをはじめ、牧田さんでも正式な名前が分からない、新種かもしれない昆虫まで沢山集まってきました。

ライトトラップにこれだけ多くの昆虫が集まっているにもかかわらず、同じ種類がほとんど見られないことからも、この地域の生物多様性の豊かさが分かると牧田さんに仰っていただきました。
(ちなみに今回のツアーでは、捕まえた昆虫は観察したあと、すべて自然に返しています。)
翌日は、いよいよジャングルの中へ。
虫を探しながら歩いていると、牧田さんから驚くような話を聞きました。
「100m歩くだけでも、生息している昆虫の種類が驚くほど変わる!」
昆虫の種類が違うということは、それを支える植物も多様だということです。グヌン・ハリムン・サラック国立公園の多様性の豊かさが垣間見れた時間でした。


見つけた昆虫一つひとつについて、特徴や習性を解説してくださる牧田さん。
気がつけば、大人も子どもも夢中。
「次は何が出てくるんだろう?」
そんな気持ちで森を歩く時間は、自然の豊かさを頭で学ぶというより、私たちの中にある「センス・オブ・ワンダー」が次々と呼び起こされるような時間でした。
豊かな森だからこそ見えてきた課題
一方で、今回の訪問では、少し考えさせられる出来事もありました。
これだけ珍しい昆虫が生息する場所だからこそ、昆虫には「商品」としての価値もあります。
現地スタッフから、海外の昆虫バイヤーが村を訪れているという話を聞きました。
もちろん、昆虫の販売が村の人たちの収入につながっている側面もあります。
外から来た私たちが、単純に「捕ってはいけない」「売ってはいけない」と言って済む話ではありません。
では、この豊かな生物多様性を守りながら、地域の暮らしにも還元していく方法はないのでしょうか。
そこで牧田さんから出てきたのが、
昆虫を「捕って売る」のではなく、「守る」ことを地域の仕事にできないか
というアイデアでした。
昆虫観察を目的としたエコツアーをつくり、村の人たちがガイドやコーディネートを担う。
珍しい昆虫がたくさんいること自体が地域の魅力となり、昆虫が森に生きていることで、地域にも収入が生まれる。
そんな仕組みができれば、生物多様性の保全と地域の生計向上を両立できる可能性があります。
「虫がいること」が、地域の価値になる
今回、牧田さんと一緒に森を歩いて感じたのは、専門家と現地を歩くことで、今まで見えていなかった地域の価値が見えてくるということでした。
私たちが単純に「自然豊かな村」と見ていた場所も、昆虫の専門家の目を通すと、世界的にも非常に面白い可能性を持ったフィールドとして見えてきます。
同時に、その豊かさをどう守り、地域の暮らしとどう両立していくのかという、新しい問いも生まれました。
「珍しい虫がいるから、捕って売れる村」ではなく、
「珍しい虫が生きているから、会いに行きたくなる村」へ。
すぐに答えが出るテーマではありません。
それでも、JEEFインドネシアがこれまで築いてきた地域との関係を大切にしながら、牧田さん、村の人たちと一緒に、その可能性を考えていきたいと思います。

そして次回は、森から一転、巨大な「ごみの山」へ。
日本からお越しになったゲストと共に、ボゴール地域の最終処分場を訪ねました。
そこでは、「ごみ」の向こう側にある人々の暮らしを目の当たりにすることになりました。
次回「ごみの向かう先」へ続きます。
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昆虫ハンター・牧田さんの活動はこちらからご確認いただけます。
文責:小池涼子(事業部 海外事業グループ)
