ブータンの環境と環境教育の将来について
ブータンでは環境教育が重要視されており、今後も優先されていくと思います。メディアや環境保護団体、教育機関などによる啓発活動によって、ブータンの人々は新たな環境問題を認識し、課題への取り組みに積極的になってきています。農村部の人々や学校の子どもたちは、地球規模の気候変動とその適応、野生生物との衝突、人間活動が環境に与える影響など、複雑な問題を認識するようになりました。
ブータンは、持続可能な開発を進めていくことを表明しており、環境保護と環境意識の向上のためにさまざまな取り組みを実施しています。ブータンはすでに排ガス削減のための措置を講じており、よりエネルギー効率の高い環境づくりに取り組んでいます。また、ブータンは森林や河川などの天然資源の保全に積極的に取り組んでいます。そういった取り組みをしつつ、現在および将来の世代が教育を受け、資源を保護し、持続可能な選択と実践をすることに意識を向けることが重要です。
近い将来、テクノロジーが人々の生活のあらゆる場面で活用されるようになることは、非常に明白だと思います。テクノロジーは、より多くの人々にアプローチするための有効な手段のひとつです。また、環境教育においても、テクノロジーはさまざまな形で活用することができます。環境とその構成要素についてみんなが学び、理解を促すことに使用することができます。例えば、地理情報システム(GIS)を使って環境が時間とともにどのように変化しているか、人間の活動によってどのような影響を受けているかを調べたり、エンジニアリングシステムを使用して構造設計をより持続可能で効率的に改善したりするなど、使用できるシステムやアプリケーションは数多くあります。また、テクノロジーを使って教材を作成したり、没入型の学習体験を提供することも可能です。テクノロジーの最も優れた点のひとつは、環境の状態や変化を監視・追跡し、リアルタイムでデータを観察・分析するシステムを利用できることです。
通常、ブータンの開発理念は5ヵ年計画の実施とされています。しかし、2019年、政府は国民にとって大事な9つの優先分野を、第12次5カ年計画とは別に実施するプログラムとして取り決めました。9つの優先分野のうち、廃棄物プログラム、水プログラム、有機食品プログラムは、国民の環境意識と権利保護に取り組んでいます。こういったプログラムは、関連する問題や課題を解決する技術の利用にも取り組んでいます。例えば、廃棄物管理を推進するための環境配慮型技術(EST)の活用は、廃棄物の保管施設(ゴミ箱)から最終処分までの一本化を促進し、廃棄物の特徴に基づいたシステムを実施するものとなっています。
最近、政府の改革により、ブータンではさまざまな省庁や政府機関の再編が行われました。もう一つの顕著な動きとしては、異なる機関や省庁にまたがるガバナンス、経済、社会、セキュリティの4つのグループを設立したことです。4つのグループのうち、経済グループは、持続可能で責任ある方法でブータンの経済変革を推進することが期待されており、インフラ、エネルギー、労働、貿易、工業、鉱業に焦点を当てています。社会グループは、ブータン社会が継続的に進歩することを保証するもので、国民と地域社会を大切にし、充実した生活を送るための最良の機会を与えるためのアプローチを実施していくことが期待されます(保健と教育に重点を置いています)。
ブータンは自然資源の保護において大きな進歩を遂げており、持続可能な開発への取り組みは改革とともに継続されていきます。適切な取り組みと資源があれば、ブータンは環境教育と保全の分野で世界のリーダーであり続けることができると思っています。
文責:チェリン・チョキ
翻訳:山口泰昌(海外事業グループ)