「学ぶために読む」のではなく、「読むから学ぶ・感じる」のでは?
こんにちは。ちえの木の実です。
夏休みには「読書感想文」という宿題があるためか、頭を悩ますお子さん(親御さんも)からさまざまな質問を受けました。大人でも、1冊の本を読んで「なにを感じたか」を書くのは、難しいことです。それ以前に、「なにかを感じるために」「なにかを学ぶために」という目的で本を選ぶのは、苦しいことかもしれません。
1冊たまたま出会った本がおもしろいと感じなくても、1冊読んだという確かな体験になります。「つまらなかったけど読んだ」でもよいではありませんか。あとになって「どこがつまらなかったのかな」とふと思ったら、その本が心のどこかに残っている証拠ですね。
9月の本棚は…
9月に入ってもまだまだ暑さが残り、日中はツクツクホウシ、日が暮れてからはスズムシが忙しそうに鳴いています。この季節の変わり目のあわただしい感じが(今年は特に)お店の棚にも現れていると思います。
中秋の名月が過ぎても美しい「月の絵本」、「元気なおじいちゃん・おばあちゃんの絵本(敬老の日)」、「運動会やお弁当」、そしていつまでも大事にしている「防災の本」コーナー。夏を迎えるごとに、日本だけではなく地球全体の危機を実感し、身震いしてしまうほどです。
今回は、それぞれのテーマから1冊ずつご紹介したいと思います。
『おじいさんならできる』
はじまりは、ヨゼフがあかちゃんのときにおじいさんが作ってくれた1枚のブランケット。ヨゼフが大きくなるにつれ、ブランケットはジャケットに、ジャケットはベストに、ネクタイに、ハンカチに…と形を変えてゆきます。そのアイデアと完璧な仕事ぶりは、さすがはおじいちゃん。「おじいちゃんなら きっと なんとかしてくれるよ」と強い信頼を寄せているのです。
一方、切り取られた布は、地下にあるねずみの家へ。ここでは、布がどんどん増えていくので、ねずみ一家の暮らしが豊かになるのです。”Something from Nothing”という原題も、この絵本のおじいちゃんの知恵の原点なのでは?と、あたたかい気持ちになります。
『ぬすまれた月』
世界中、どの国からでも見える月。子どもも大人も、国王も兵士も、誰もが見上げることのできる月は、各国で見え方が違うようです。ある国ではうさぎ、またある国では読書するおばあさん、ライオンにかえる…きっとその地方に伝わる神話や文化が映しだされているのでしょう。
「月」を表す言葉の響きがとても美しく感じるのは、月の持つ神秘的な魅力でしょうか。そんな魔性の「月」を盗みたいと思う人がいても、おかしくはありません。盗まれた月が、形を変えながら人の手を渡っていく様子は、愉快なものです。
また、国と国の争いにまで発展する始末。この絵本のオリジナルが描かれたのは、1963年、アメリカとソ連の冷戦時代のことでした。誰のものでもあり、誰のものでもない月、この絵本を読むと、月の影に潜む壮大なテーマに気づき、ハッとします。そして、平和を願わずにはいられなくなるのです。
『かみなり』
空を切り裂き、激しい音と共に光るかみなり。まるで天が、自然が、地球全体が憤っているように感じられて、恐ろしくなります。でも、この写真1枚1枚を見ていると、空を彩る光のアートのようにも見えて、ただただ引き込まれてしまいます。
そんなかみなりの正体を、芸術的角度からも、科学的角度からも見せてくれるのが、この絵本です。なぜかみなりができるのか、かみなりから身を守るにはどうしたらいいか、かみなりのエネルギーをなにかに利用できるかなど、知っておきたいことや、考えてみたいことが満載。かみなりが特に印象的だった今年、刊行されたばかりの新刊写真絵本です。
どんな本を読んだらいいかわからなければ、季節や、最近体験したことなど「自分の中の旬」から探してみると、絵本選びに幅がでてきます。ニュースで話題の事柄、最近ふと考えてしまうこと、友だちや親子の会話のトピックなど…1冊の本の中にはあらゆるテーマが潜んでいますから、きっと心にフッとひっかかるテーマが見つかると思います。もし、迷ってしまったり、悩んでしまったら、お気軽にご相談くださいね。