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バングラデシュにおける零細ヤシ砂糖生産者および花卉農家支援事業 第2年次完了報告! 2025.09.01

バングラデシュ・クルナ管区ジョショール県で進めている「農業の6次産業化による零細農村生産者の生計向上プロジェクト」は、第2年次を無事に終えました。
今年度も、現地協同組合と生産者たちの主体的な取り組みにより、着実な成果が生まれています。

1. 農業生産者協同組合の組織運営・基盤の強化

協同組合の事務所兼倉庫を新たに建設し、活動の拠点が整備されました。あわせて、組織運営のマニュアルを作成し、資金管理や会計処理のルールなどを明文化しました。これを活用した研修や定期的な会議を通じて、組合員自身が計画的に資金を管理し、活動を運営できる体制が構築されています。

さらに、組合員の共通ユニフォームの導入によって生産や販売の際の衛生環境が向上するとともに、組合としてのアイデンティティが強化されました。毎月の組合費の積立も定着し、自立的な活動の基盤が整えられています。こうした取り組みにより、協同組合は単なる生産者の集まりから、持続的に発展できる地域組織へと成長しつつあります。

協同組合の事務所兼倉庫

協同組合の定例会議

2. 適切な生産技術の習得や商品開発・サービスを行うための技能向上と商品の販売

ヤシ糖、花卉、手工芸品、アグロツーリズムの各分野で、研修やスタディツアーを通じて新しい技術や知識を学び、実際の生産や販売に活かす取り組みが進みました。

ヤシの樹液採取グループでは、糖蜜精製技術や加工・包装の改善に加え、品質管理ラボを設置し、製品の品質を安定的に確保できる体制を整えました。花卉グループでは、地域に苗床の設置や堆肥づくりによる持続的な花卉生産を可能にするとともに、都市部を含む販売拠点の拡大を実現しました。手工芸品グループでは、カゴ等の手工芸品や多様な製品開発に挑戦し、現地市場やSNSを活用した販売促進活動を展開しました。さらに、アグロツーリズムでは、ホームステイの受け入れが始まり、農村の暮らしや自然資源を体験価値に転換する新たな収入源が生まれました。

こうした取り組みの積み重ねにより、対象となった135世帯全体で現金収入は事業開始前に比べて10〜17%増加し、農村における生計向上の確かな成果へとつながっています。

ヤシ樹液(糖蜜)の加工・包装

ガーベラを生産する花き農家

ヤシの葉を利用した手工芸品づくりの研修会

アグロツーリズムの参加者からのフィードバック

3. 有機農業をテーマとした環境教育の実施

地域の小学校では有機農業をテーマとした学習会や交流イベントが開催され、子どもたちが身近な自然と農の営みについて学ぶ機会が設けられました。
さらに、約470名の生徒が参加した絵画コンテストでは、環境保全を題材にした作品を通して、子どもたちが自らの感性で自然とのつながりを表現しました。入賞した子どもたちは、世界自然遺産シュンドルボンへのスタディツアーに参加し、豊かな生態系や人々の暮らしを体験的に学ぶことができました。

これらの活動を通じて、地域の子どもたちに環境保全の意識が育まれ、次世代へと引き継がれる基盤が着実に築かれています。

小学校の有機農園で作業する生徒たち

有機農園をテーマとした絵画コンテスト

今回の第2年次事業では、「協同組合の組織基盤の強化」「生産技術や商品開発を通じた技能習得と販売促進」「有機農業をテーマとした環境教育」の3つの柱を中心に取り組みを進めました。これらの活動を通じて、農村地域の生計向上と同時に、地域資源の保全や次世代への教育といった幅広い成果が得られています。

これらの成果は、SDGsの複数の目標──貧困削減、持続可能な農業、ジェンダー平等、持続可能な地域社会、陸域生態系保全など──に広く貢献しています。

2025年5月からは第3年次の活動がスタートしました。当該年次では、「農業生産者協同組合の組織運営と基盤の定着」「開発された商品の品質向上と販売網の拡大」そして「地域に根ざした有機農業をテーマとした環境教育の普及啓発」を軸として進めています。
今後も、現地協同組合と地域住民が主体的に取り組みを継続し、持続可能な発展へとつながっていくことが期待されます。

「農業の6次産業化による零細農村生産者の生計向上プロジェクト」
第2年次事業中間報告
第1年次事業完了報告
第1年次事業中間報告
第1・2・3年次事業計画

文責: 日本環境教育フォーラム 客員上席研究員
/江戸川大学 社会学部 准教授
佐藤 秀樹

 

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