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バングラデシュにおける零細ヤシ糖生産者および花き農家支援事業 第3年次中間報告! 2025.10.30

当団体では、バングラデシュ・クルナ管区ジョショール県において、ヤシ砂糖や花きなどの生産に携わる零細農村生産者135世帯を対象に、生計向上と環境保全を両立させる3年間のプロジェクトを実施しています。

本事業は、地域の自然資源を活かした農業の6次産業化(生産・加工・販売・観光の一体化)を通じ、貧困削減と地域の持続的発展をめざす取り組みです。

今回は、第3年次(2025年5月〜2026年4月)の中間時点(2025年10月現在)までに得られた主な成果をご紹介します。

組織化と地域連携の深化

プロジェクトの中核を担うのは、農村生産者による協同組合です。
これまでに小委員会・執行委員会を設置し、委員会や月例会議を通じて自立的な運営が定着しつつあります。

また、行政、民間企業(食品加工・観光業)、大学、NGOとの連携を強化し、地域全体で支え合う協働体制が確立されつつあります。

協同組合は、ヤシ砂糖、手工芸品、花卉、アグロツーリズムの4グループを中心に、企画から製造、販売、観光までを一貫して運営する体制を整えています。

協同組合の定例会議
協同組合の運営について話し合うワークショップ

 

ヤシ砂糖グループ:品質と販路の拡大

ヤシ砂糖生産者は、加工・包装・品質管理に関する研修を複数回実施し、衛生的で高品質な製造技術を習得しました。品質管理ラボの運営ガイドラインも完成し、持続的な品質維持体制が整っています。

また、オンライン販売研修を通じてFacebookなどのSNSプラットフォームを活用した販路拡大が進みました。

さらに、ヤシ苗の育成と植樹も進み、地域資源の循環利用と将来の収益基盤づくりを両立させています。

ヤシ糖商品の販売先候補への訪問
ヤシ苗床の維持管理

手工芸品グループ:女性の力による新しい価値創出

女性を中心とする手工芸品グループでは、ヤシの葉や花を活用した新製品開発(約7種程)と、包装・デザイン研修を通じた商品改良が進みました。

6月以降、品質改善研修(30名)やマーケティング強化研修を順次実施し、クルナ・ジョショール両市など19店舗で販売を継続中です。

女性の収入向上が顕著に進み、地域経済の多様化とジェンダー平等に寄与しています。

手工芸品づくり
完成した手工芸品

花き生産グループ:環境と美を両立する持続型農業

花き農家では、有機肥料の導入や堆肥づくり研修を通じて環境にやさしい生産体制を確立してきました。
花苗木園を整備し、販売・装飾品製作を進めています。

クルナ・ダッカ・ジョショールの都市部における販売拠点も拡大し、18店舗で継続販売。
地域ブランドとしての認知が定着しつつあります。

花き栽培
堆肥づくり

アグロツーリズムグループ:観光による新たな収入源

地域住民主体の観光事業化も大きく進展しています。現在、コテージ4棟を建設中です。

5名を対象にホームステイ受入研修を実施し、衛生管理やホスピタリティの向上が見られました。

今後は、学生や都市住民を対象とした「農村滞在型ツーリズム」として展開し、地域の新たな収益モデルとしての定着を目指します。

アグロツーリズムのガーデニング整備
コテージ(宿泊施設)の建設

環境教育の推進:子どもたちが未来を耕す

地域の公立小学校10校を拠点に、有機農園での野菜・花の栽培や有機農業テーマとした環境教育プログラムの準備が進んでいます。

子どもたちが実際の畑で学び、家庭や地域に学びを還元することで、環境配慮型農業の文化的定着を目指しています。

小学校における有機農園
小学校における有機農園づくりの授業

今後の展望:持続可能な農村地域モデルの確立

第3年次後半からは、ヤシ砂糖・花き・手工芸・観光の連携をさらに深め、商品の販路拡大と収益安定化を図ります。

協同組合による事務所運営、太陽光発電の導入、施設・機材の維持管理を通じて、事業終了後も自立して活動を継続できる体制を確立する予定です。

また、これまで当団体がシュンドルボン地域で展開してきた天然蜂蜜・エコツーリズム事業との連携を強化し、クルナ管区全体に広がる包摂的で持続可能な農村地域モデルとして発展させていきます。

 

<本事業の関連情報は以下をご覧ください>
第2年次事業完了報告
第2年次事業中間報告
第1年次事業完了報告
第1年次事業中間報告
第1・2・3年次事業計画

 

文責:日本環境教育フォーラム 客員上席研究員/江戸川大学 社会学部 准教授
   佐藤 秀樹

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