自然の中で、学びとつながりがひらいていく時間
標高1,400mにある清里高原。八ヶ岳の雄大な自然に抱かれたこの地で、清里ミーティング2025が2泊3日で開催されました。
全国各地から、自然体験活動の実践者や企業のCSR担当者、環境教育を学ぶ学生など、多様なバックグラウンドを持つ参加者102名とスタッフ約30名が集いました。
今年のテーマ「自然にふれるよろこびを、すべての人に。」を軸に、身体的・経済的なハードルや世代・立場の違いを超えて、誰もが当たり前に自然を楽しめる未来を目指し、対話と学びを深めました。
こちらのレポートでは、当日の空気感やプログラムの臨場感をお楽しみください♪

参加者全員で共に考える。全体会で共有した2つの話題
イベントの幕開けとなる全体会では、今回のテーマを象徴する2つのセッションが開催されました。
全体会1:インクルーシブな自然体験のあり方
病気や障がいの有無、家庭環境に関わらず、すべての人が自然を楽しめる機会をどう創り出すか。
ユニバーサルビーチの取り組みや、難病の子どものためのキャンプの実践例を通じ、「できない」を「できる」に変える現場の知恵が共有されました。
ファシリテーターは、株式会社Think & Camp代表取締役・原田 順一さん。
登壇者には、NPO法人くすの木自然館 重富ユニバーサルビーチプロジェクトリーダー・石神 愛梨さん、公益財団法人そらぷちキッズキャンプ 執行理事/事務局長・佐々木 健一郎さんをお迎えし、登壇者からの話題提供とトークセッションが行われました。
現在も試行錯誤を重ねながら取り組まれている現場のリアルな実践例が語られ、自分たちでも新しい取り組みに一歩踏み出したいと勇気をもらえるような話題提供となりました。

全体会2:“ふしぎ”とともに生きる─センス・オブ・ワンダーで編む学びと暮らし
レイチェル・カーソンの名著『センス・オブ・ワンダー』は出版から60年を迎えました。
全体会2では、時代が変わっても色褪せない自然に驚嘆する心をどのように育んでいけるのか、子どものそばにいる大人はそんな感性をどう持ち続けるべきかが語られました。
ファシリテーターは、NPO法人みっけ 代表理事・松岡 美緒さん。
登壇者には、国際基督教大学 非常勤講師・上遠 岳彦さん、福音館書店「ちいさなかがくのとも」編集長・山北 美由紀さんをお迎えしました。
そして当日には急遽参加が決まり、翻訳を手がけた上遠恵子さんも登壇!
業界を越えた4名が集ったトークセッションは、会場みんなの心を動かし、大いに盛り上がりをみせました。
※全体会1・2の講演内容の詳細は、後日公開される報告書に掲載します。お楽しみに!

環境教育に関する多彩なワークショップ
3日間で開催されたワークショップは、清里の自然を味わうものや、環境について伝える技術を学ぶもの、日々の暮らしに自然を取り入れるものなど全16種類。
参加者一人ひとりが自分のフィールドや関心に合わせて学びを深められるよう、多岐にわたるプログラムが、清里のフィールド各所で行われました。
清里の自然を全身で味わうワークショップ
「八ヶ岳ブルー」の空の下、冬の森を歩き朝日を浴びる早朝さんぽや、野鳥観察。また、五感を使うボディワークや、清里で見つけた発見をオンラインマップで共有したりと、「センス・オブ・ワンダー」を呼び覚ますようなワークが行われました。


「伝える」技術を学ぶワークショップ
地域の魅力を引き出すインタープリテーションの計画策定や、アナログでの力強いプレゼンテーション手法、さらには歴史上の人物になりきって物語を伝える手法など。
情報の受け手がいかに「自分ごと」として自然を感じられるか、そのための「伝え方」の技術を学ぶ場が設けられました。


日々の暮らしや生活に自然をつなげるワークショップ
企業のサステナビリティ研修や、オンラインを活用したインクルーシブな場づくり、身近な資源を活かしたものづくりなど。
教育の枠を超えて、ビジネス、福祉、家庭といった私たちの暮らしのあらゆる場面に「自然との共生」をどう届けていくかがディスカッションされました。


学びの交差点となる、ポスターセッション
ポスターセッションには、全28名が発表。
地域に根ざした川づくりや里山での挑戦、白神山地や釧路湿原といった雄大なフィールドでの取り組み、さらには日中韓の国際連携まで、多種多様な活動が並びました。

発表者と参加者が垣根なく入り混じり、
「その視点はなかった!」
「今度、一緒にやりましょう」
と、新しい取り組みへのきっかけも生まれる場となっています。

肩書きを超えて語り合う、情報交換会
夜には、情報交換会が開かれました。少しお酒も入り、会場はリラックスした雰囲気に。
学校の先生、企業のCSR担当、NPOスタッフ、学生、地域おこし協力隊など、年齢も職種も分け隔てなく混ざりあいながら各テーブルで自由に交流を楽しむ時間となりました。

各テーブルでは、
「世代を超えて、自然・環境・人に向き合える場に参加したかった」
「自分の活動をアップデートするヒントがほしい」
など、それぞれの参加背景も語られていました。
その中で、「わかるよ、うちも同じだよ」「それ、こうしてみたら?」など、活動への思いがけないヒント。そんなやりとりが自然と生まれます。

清泉寮で過ごす3日間──心がほどける「場」の力
2泊3日の清里ミーティングの場を支えているのが、会場となる「清泉寮」の存在。
1938年にポール・ラッシュ博士によって建てられた、清里のシンボルのような宿泊施設です。

窓の外には牧草地が広がり、晴れた日には富士山の稜線がくっきり。

そんな清里の地ならではの自然を体感できるよう、ヤマネミュージアムツアーやジャージー牛の牧場見学など、スキマ時間にも充実したオプション企画が用意されていました。

また、地元の新鮮な食材をふんだんに使った食事や、名物のジャージー牛乳ソフトクリームを味わう時間も、清里ミーティングの楽しみの一つです。
美味しい食事を囲むことで自然と会話も弾み、参加者同士が打ち解けるきっかけにもなりました。

こうした心地よい環境があるからこそ、異なる専門領域を持つ100名以上の参加者が、共通の話題についてフラットに対話し、交流を深めることができます。
和やかな雰囲気の中で生まれた繋がりやアイデアは、明日からの活動をより良くする確かなヒントになったはずです。


2026年、いよいよ40回目の節目へ!
1987年に始まった清里ミーティングは、来年、ついに、第40回目の開催を迎えます!
〈清里ミーティング第40回〉
日程:2026年12月4日(金)〜6日(日)
これまでの歴史を大切に継承しながら、環境教育全体の新たな可能性を拡げていくことを目指して。
2026年12月、またこの八ヶ岳の麓で、みなさんにお会いできることを楽しみにしています。

