カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業

平成25年10月より、三井物産環境基金の助成を受けて、「カンボジアにおけるオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育・普及啓発事業」を開始しました。ここでは、本事業の概要についてご紹介いたします。

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オオヅル

 オオヅル(Grus antigone) は、インド、東南アジア北部、オーストラリアに局地的に分布し、IUCNのレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。かつてはインドシナ半島全域に広く分布していましたが、過去50年間にわたる生息地の消失及び狩猟の影響により個体数が激減したため、現在、同地域の個体群はカンボジアの一部、ラオス南端、ベトナム南部及びミャンマーの南部で2,000羽未満が確認されるのみとなっています。

カンボジアにあるオオヅルの生息地

 事業の対象地域であるカンボジアKampot州Kampong Trach地域の湿地では、2010年3月時点で、確認されているインドシナのオオヅルの個体群のうち、およそ15%に相当する270羽以上が確認されており、同種の生息地として最も貴重な湿地の一つであると考えられます。

 また、この湿地にはオオヅルの他にも多様な野生生物(野性鳥類約50種や絶滅が危惧されている植物種など)が生息しており、生物多様性保全の観点からも大変重要な湿地と言えます。

 しかし、当地域の住民の多くは湿地の自然資源に強く依存した生活をしており、湿地の農地への転用、化学肥料等による水質・土壌汚染、違法漁業による水産物の乱獲、野生生物の狩猟等の問題が現存しているため、当湿地に生息するオオヅルをはじめとする野生生物は、個体数減少及び生息地消失の脅威にさらされています。

 このように、対象地域ではオオヅルの保護及び生息地の保全の推進が不可欠であり、この状況を受けて、事業対象地のうち217haはBirdlife InternationalらによりImportant Bird Areaに、またカンボジア政府からは国立湿地保護区に指定されました。

 一方で、同地域の住民による湿地に対する人為的影響は取り除かれていないため、オオヅルの保護及びその生息環境保全達成のためには、地域住民の意識、行動を変えるための環境教育・普及啓発活動の実施の重要性が高まっています。

オオヅルの保護及びその生息地の保全のための環境教育・普及啓発

 そこでJEEFは、同地域で長年活動を行っており、前述の保護区指定にも貢献したMlup Baitong(カンボジアの環境NGO)と共に、事業対象地域内にある全ての小学校(3校)を対象に、オオヅル及び生息地の保全に関する環境教育プログラムを作成・普及し、生物多様性保全の維持・改善に寄与することを目的とした活動を開始しました。

 具体的には、
(1)授業で使用するワークブック等の教材、
(2)児童が体験的に学ぶことができる、ツルの生息地を模した野外学習教材
(3) (1)及び(2)の教材活用を補完する教員用指導マニュアル
 以上3点を作成し、これら(1)-(3)を活用した環境教育プログラムを対象小学校に導入していきます。
さらに将来的には、Kampong Trach地域の住民を対象としたオオヅル及び生息地の保全に関する環境教育プログラムへと発展させ、対象湿地のラムサール条約への登録を支援することを通して、オオヅルを含めた生物多様性の保全を達成することを長期的な目標として見据えています。